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研究内容

1 生殖免疫学と周産期感染症

妊娠母体は免疫学的異物である胎児・胎盤を許容しながら、母児共に感染性微生物から身を守る必要があります。妊娠時の感染症は流早産や胎児奇形、妊娠高血圧症候群や出生後の障害の原因となることがあります。母子感染の機序と予防を研究し、あわせて病原微生物由来の免疫調節物質が、新たな習慣流産治療薬となる可能性を研究しています。

Komine Aizawa et al. J Reprod Immunol. 2011 Dec;92(1-2):21-6
Komine Aizawa et al. J Reprod Immunol. 2011 Dec;92(1-2):21-6

また粘膜免疫に重要な上皮バリア機能と、腟内細菌叢の関係を研究しています。上皮バリア機能が低下すると、HIVを始めとして様々な性感染症の罹患率が上がることが知られています。細菌叢の役割を解明することで、より効果的なプロバイオティクス応用への可能性を探っています。

Takada K. et al. Am J Reprod Immunol. 2018 Sep;80(3):e13027.

2 新たな結核ワクチンの開発・抗酸菌感染防御免疫の解析

結核は現在においても、重要な感染症です。加えて、近年、非結核性抗酸菌症患者数が増加しています。私たちは新たな組換えBCGを作成し、プライムブースト法により,結核菌や非結核性抗酸菌に対して有効な防御的免疫応答を誘導できるワクチンの開発を試みています。

Honda M et al. J Immunol. 2009 Aug 15;183(4):2425-34
Honda M et al. J Immunol. 2009 Aug 15;183(4):2425-34

3 腸内細菌叢解析

腸内には1000種を超える細菌が定着しています。腸内細菌叢の種類や多様性の変化(dysbiosis)は肥満症や炎症性腸疾患、その他様々な疾患に関わることが報告され、関心が高まっています。私たちは重症心身障害児や起立性調節障害の児におけるdysbiosisの傾向や、消化器内科との共同研究でHelicobacter pyloriの除菌療法前後における細菌叢の変化などを研究しています。

左 Takano C, et al. J Infect Chemother. 2018 Mar; 24(3): 182-187.

右 Ishii W, et al. Prim Care Companion CNS Disord. 2019 Apr 11;21(2).

4 新しい視点からのウイルス性胃腸炎を中心とした研究-アジアとの共同研究-

下痢症ウイルス(ロタウイルス、ノロウイルスなど)感染症は、世界では死亡の多い疾患としその対策が問題となっています。私たちは長年、これらのウイルスの遺伝子レベルでの疫学や診断法の開発(イムノクロマト法、Multiplex RT-PCR法など)を世界に先駆けて行ってきました。これからもアジアの共同研究者とともに、これらの研究に加え、さらにワクチンや治療薬の開発、細菌との同時感染などの研究を続けていきます。

Thongprachum A. et al., Infect Genet Evol., 13: 168-174, 2013. Chan-It, W., et al., J Med Virol., 84: 1089-1096, 2012

左 Thongprachum A. et al., Infect Genet Evol., 13: 168-174, 2013.
右 Chan-It, W., et al., J Med Virol., 84: 1089-1096, 2012

5 適切な抗微生物薬使用と薬剤耐性出現防止

20世紀前半の抗生物質の開発以来、感染症は薬剤でコントロールが可能という楽観論が支配しましたが、20世紀後半以降MRSAをはじめとする薬剤耐性が全世界で問題となっています。私たちはわが国と東南アジア諸国において、周術期の抗菌薬投与と術後感染の疫学調査、HIV垂直感染児の抗レトロウイルス薬耐性ウイルスの解析などを行っています。

Trinh QD et al., AIDS Res Hum Retroviruses. 2012 Oct;28(10):1305-7.Trinh QD et al., AIDS Res Hum Retroviruses. 2012 Oct;28(10):1305-7.
Trinh QD et al., AIDS Res Hum Retroviruses. 2012 Oct;28(10):1305-7.

6 古典絵画・古記録の医史学的解析

 古代彫刻やルネサンス以降の写実的な西洋絵画、わが国内外の古典的医療記録には多くの病的所見が描かれています。全世界の美術館や図書館の古資料を基に現代医学からモデルや画家の疾患を推理しています。

Hayakawa et al.Med Hypotheses. 2007;68(4):906-9
Hayakawa et al.Med Hypotheses. 2007;68(4):906-9